《Outer Edge/ 知覚の外縁》

ビヨンポイント(秋田)

アーツセンターあきた

2021

《Outer Edge》

BIYONG POINT(Akita)

arts center akita

2021

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不在が描出する風景

本展はビヨンポイント展覧会公募にて選出された企画で、音響表現を専門とする宮本一行と建築設計やインスタレーションの制作を続ける船山哲郎が協働するプロジェクトだ。公募案の段階では、宮本が様々な地でその場所の音響特性に呼応するようにトロンボーンを演奏しながら移動するパフォーマンスの映像を、船山がギャラリー内に仮設的に挿入する場に配置するという提案であった。空間の変化と音の聴取の関係を模索したいという提案であったが、過去のパフォーマンスの記録を映像で展開することにより、本当に豊かな音の聴取の体験が得られるのだろうかという懸念点があった。
その課題に応答する新たな試みが、本展に結実した。宮本は五城目町のネコバリ岩周辺でフィールドレコーディングした音を素材とし、音響空間を築いた。対して、船山は同じ場所の環境や地形に着想を得て、ギャラリー内に延び広がる通路を設置した。この通路を移動しながら、ホワイトノイズのようなおだやかな高音の響きを観客は体験する。
本展では、不在やそこではないことが重要な要素となった。通路が生み出す大きなヴォイドは不在のネコバリ岩を想像させる。映像にも具体的な風景はなく抽象的なデジタル画像だ。ホワイトキューブという高度に抽象化された空間において、通路を移動しながら抽象的な音やイメージを眺めることで、鑑賞者は徐々に音の変化に耳を傾けるよう自身の知覚をチューニングしていくのだ。
ところで、本作はネコバリ岩周辺の環境や豊かな自然を伝えるものではない。歴史上、様々な芸術鋭意を通じて繰り返し自然環境はモチーフとされてきたが、それ自体を再現することは不可能だ。そして、ここでは可聴域を越えた音や見えない道を具現化することで、彼らが取材した現場では聴こえない音や見えない風景を体験する場をギャラリー空間に生み出した。まさに、不在が描き出す音の風景があった。

服部浩之(インディペンデント・キュレーター/2019年度「BIYONG POINT企画公募」審査員長)

​※『Outer Edge/ 知覚の外縁』より転載